尋ねれば、急にそっぽを向かれてしまった。
どこかきまずそうな、そんな顔をしながら。
……やっぱり、私には言いたくないってこと?
聞かないほうが正しい、そう思っていたけれど
それでも……聞くなら、今しかない。
「奏──」
「なんでもねぇよ。……息抜きに来ただけだ。俺は戻る。お嬢も、長居しねぇで戻れよ、いいな」
嘘だ。
今のは、いくら私でも分かる。
息抜きなんて、ただの思いつきだって。
ねぇ、なんでそんな、
かなしいような苦しいような顔して嘘つくの?
遠ざかっていく奏矢の姿を見つめ、心の中で投げかけても、奏矢は振り返ることはなく……見えなくなった。
……夢で見た光景に似てる。
うずくまっていなくとも、声の届かない奏矢が夢と重なって、すでに温くなったココアが滑り落ちそうになった。
「あれ、あ!一条さまー!」
「こら春夏冬!手を振ってはいけません」
けれど、頭上からふってきた声にココアを持つ手に力が戻る。顔を上げれば、校舎の窓から顔を出す執事たち三人の姿が。
「オジョー、なにし……なにされてるんですかー」
矢絃、棒読み。
笑ってただ、手を振れば矢絃は小さく返してくれて。
「上からで申し訳ありません一条様。午後の授業、よろしくお願いいたします」
「はーい」
一礼して去っていく皆。
私も戻ろうと、重い足で歩いた。



