──あんなうずくまる程、何があったのか……聞きたいのに、切り出そうと口を開いては佐藤が首を振っていたのを思い出し、やはり聞いてはいけないんだと聞けずにいる。
もう何回、切り出そうとしたか分からない。
もし、奏矢から話を聞いて矢絃が知っていたらさりげなく教えてくれるものだと思うけど、それもないからやっぱり矢絃は知らないんだ。
色々私なりに考えてはみたけど、佐藤や他の人に怒られる、なんてことは今の奏矢には絶対にない。仮に注意されてても、うずくまるなんてこともないはず。
だから、学園にいるうちに何かあったとしか──
「……オジョー、どうかした?」
「え?ううん、なんでも」
私が矢絃に、奏矢がうずくまっていた、なんてことも言えない。言えば、矢絃は奏矢に直接聞くんだろうけど、こういうのってべらべら話すことじゃないから……。
もし……奏矢が自然と口にすれば聞くだけだし、私は佐藤がうったえたように、そっと、何も知らないよって振りをするほうがきっと正しい。
きっと。
正しい。
きっと。
……まるで自分に言い聞かせるように、何度も同じ言葉を心の中で繰り返した。



