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……嫌な夢を見た。
ずっと考えていたからか、夢の中で奏矢が同じようにうずくまっていて。
どうしたのって聞いても、私の声が届いていないのか奏矢は顔を上げないままで。
近付いても近付いても、奏矢との距離は埋まらず、呆然とする私がいて。
どこか妙にリアルで、起きた時に錯覚を起こしそうだった。
滲んだ汗を拭い、布団から出ればいつものごとく起こしに来た……二人。
矢絃の『おはー』と軽めの挨拶をしてくれて、後ろから来た奏矢は『はよ』といつものルーティンをこなす。
眩しくなった部屋で、照らされた奏矢は昨日、私に気づいていなかったのか、何もなかったように振る舞っていた。
『ほら、着替えてこいよ。寝癖あんぞ』って。
私の寝癖の場所を指摘しながら笑っていた。
きっと、昨日の場面を私が知らなかったら、私も何か言い返すことが出来たんだと思う。
でも……見てしまったから、知ってしまったからこそ、奏矢が向ける笑顔を見ると、とても胸が締め付けられて……苦しくなる。
今、その笑顔無理してないかって。
心が、締め付けられるの。



