『っ!?』


急なことに視界が揺れると、ひどく顔を歪め、私を睨み付ける瞳が目の前にあって。


『……お嬢様だかなんだか知らねぇが、こんな野郎に構ってねぇでとっとと帰りやがれっ……!!』

『奏矢……!』
『お嬢様っ』


控えめな男の子と佐藤は彼を止めようとするも、それを私は制し、奏矢と呼ばれた男の子の瞳をまっすぐ見つめた。
私を睨みつけていた瞳は、すぐに覇気をなくしそらされる。

この男の子の言葉は乱暴に聞こえるけど、すぐに私を掴む手はゆるみ、その場に座り込んだ。

すぐに控えめな子もやってきて彼に声をかけ、私も目線を合わせるためにしゃがんだ。

ドレスなんか汚れたって、泥がついたってそんなことどうでもいい。
無言で佐藤に傘を頂戴と手を伸ばせば、佐藤はそっと傘を開き渡してくれた。

再び傘に二人をいれれば、奏矢と呼ばれる男の子は拳を地面に叩きつける。


「たらい回しにされるのは、もうごめんなんだよ……!!」

「オレも、あんなの懲りごり……」


二人の声は雨にかき消されていくが、私と佐藤にはしっかりと聞こえた──