『……別に、何もいらないから帰りなよ。どこの誰かわからないオレらとずぶ濡れになる理由、ないでしょ。お嬢様なら尚更』
『それは……』
確かにそうかもしれない。
だけどさっき見た時の二人は、橋から身を投げようとしていたところ。
橋の柵に手は置いても、足をかけることなんか普通じゃない。
だからこのまま、彼らをここに置いて帰ったら……本当に落ちてしまうんじゃないか、って思う。でも……
家まで送るから、一度雨宿りしないか、
そんな提案をしたところで、すんなり受け入れてくれそうな気配はない。
また声をかけても、返ってくるかさえあやうい。
それでもなんとかする術はないか、俯きながら濡れるドレスを掴みながら考えていると、不意に胸ぐらをつかまれた。



