廊下に出て並んで歩けば、"うまい答えは出せそうか"と慧は小声で聞いてきた。


「……うまいかどうかは分からないけど、このままで年を越すわけにはいかないから、ちゃんと伝えるつもりよ」

「そうか。……大丈夫、きっと美青ならきちんとした返事を返せるさ」

「ありがと」

「あー……後な、前に人間関係の相談?があるって言ったろ?」


今じゃない、とテラスでの話。
もしや、相談の時がやってきた?


「一回じゃうまく話せないと思うから何度か聞いてくれ。周りに誰もいないところで!」

「相談だものね、了解」



……私も、矢絃のことは相談したけど……まだ話したいことがある。


「慧、私も話したいことがあるの。矢絃の件とは別で。夜、どちらかの部屋に集合でどう?」

「さ、早速だな。分かった。なら美青の部屋に行く。飯食べたら即集合だ。……その前にわたしはバイオリンを乗り越えないといけないが」


前よりも注意されることは激減したものの、たまに響かせるギコギコ音が直らず。
乗り気ではない慧の背中を押しながら音楽室へと向かった。