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矢絃の告白から、返事を先延ばしにし続け丸々二ヵ月が経った。

授業の小テストや大きなテストも乗り越えつつ、日々を過ごしていて。

私も矢絃も、なんら変わらない接し方をしているから、奏矢に何か勘付かれることもしていない。


あまりにも普通で居てくれているから、このままでいいんじゃないか、なんて逃げようとする自分が生まれてきてはそんな自分に首を振る毎日。


ズルズル引きずって先延ばしにするのは、そろそろ限界ってものだろうと。


一、二ヶ月程度の付き合いなら、全然いいと思うけど、そういうわけじゃないから……。


まだか、って催促されてもおかしくないと思って過ごしているけど、矢絃は何も言ってこない。
強いて言うなら、ダンスの時間や私の部屋にいる時に奏矢よりも先に動いて私のそばに来ているのが分かる。それは奏矢も感じているだろうけど、奏矢も奏矢で負けず嫌いなところが出るから、変には捉えられていないみたい。



「……はぁ」



返事を伝えるシミュレーションをいくらしても、矢絃に伝える段階まで進めていない。


……そろそろちゃんと言わないと。


ひとり静かな図書室で本を棚に戻しながらため息をつけば、


「美青!次バイオリンだぞ、行こう」



慧が静かな空気を壊す入り方をしてきた。



……昼休みも終わりに近付いていて、誰もいなくて良かった。じゃなきゃ睨まれるもの。