「それは分かってるよ。でもそれだけじゃ駄目。オレはずっとオジョーと居たい。他の男のとこには行かせない……」
矢絃の手が私の指に絡み、強く握られる。
「ねぇオジョー……オレと付き合って。そうすれば一緒にいられる」
いつもの穏やかな声に戻った、のに私を見下ろす目は見たことないくらい真っすぐで……そらせなくなる。
「つ、付き合うって……何言ってるの。私たちは──」
「今更、"主と執事"でしょ……とか言わないでよ。オレらは最初からそんな遠い距離にいない。じゃなきゃ、素で語り合って、部屋でお菓子食べたり一緒に寝たりなんかしないでしょ」
……返す言葉が、見つからない。
本当に今更だけど、私の二人への接し方は間違っていたんだと思い知る。
仕方ない、でほとんどを許してきた。タメ口も、だらけ方も。うまく切り替えられるからと。
過去を知っていたから、よき執事を演じている二人に少しでも自分らしくいられる場があるなら、私の前でならいいと。
だけど……それがだめだったんだ。



