ベッドとテーブル、場所は違えど見上げれば矢絃と奏矢の顔が重なる。


「……何も言わないってことは、肯定でしょ。双子ほどじゃないけどオレら兄弟だし、常に一緒にいるんだから何したかくらい予想つく」


いつもより淡々と低い声で話す矢絃。
でもね、と続けた。


「奏矢はああ見えて慎重だし、オレみたいなことはしてないでしょ?」


オレみたいなこと──


キスのことを意味するのが分かる。


けれど、いくら妬いたとは言えしていいことと悪いことがあるはず。……いつもどんなに素を見せてどんなに近しい距離にいても。


『主と執事』この関係は変わらないのだから。



「……奏矢のことで妬いたと言うなら謝るわ。だからどけて」


変に高鳴る心臓を、集まってくる顔の熱を自覚しながら、どけてと目でうったえても矢絃はきいてくれない。


「オレ、この前のお坊ちゃんの件……というか少しずつ縁談話が持ってこられてる頃から、思ってた。……今までの生活が、オジョーがそばから居なくなるのがやだって」

「……それは解決したじゃない。現にすっかり断ち切れてる」