ゆっくりと離れていった熱。
私を見下ろす整った顔を、ただ目を丸くして見上げることしか出来ない。
何をされたか分かってる。
理解できてる。
漫画で見たことがあるから。パーティーで見たことがあるから。
けど、現実に自分へされると呂律が回らなくなりそうで、
「……な、にしてるの」
呟くように出した声に、矢絃は私の唇を指でなぞった。
「オレを嫉妬させたオジョーの口を塞いだだけ。……本当は、抱きしめて寝るくらいで我慢しとこうと思ってたのに。オジョーは奏矢のことばっかり」
「私はそんなつもりじゃ」
「そんなつもりじゃなくても、オレを妬かせるには充分過ぎるよ。……もしかして奏矢のこと好きなの?」
「好きって……なんでそんな話になるの」
吐息がかかる距離に顔を背ければ、押さえられていた手に力が込められた。
「オレ知ってる。交流会の前日の夜、奏矢が一人でオジョーの部屋に来たの。何を話したかは知らないけど、チェスの勝負後オジョー奏矢にソワソワしてたし。何かあったんでしょ」
何か……
"大事な女、取られてたまっかよ──"



