「へーきでしょ。寂しいとか言っても、数時間の話じゃん。ものすごい離れた場所にいるならまだしも、すぐ来れる同じ建物にいるんだからさ」
「……まぁ、そうね。何かあれば奏矢から来るなり連絡してきたりするだろうし」
スマホを一瞥して笑えば、結んだビニール袋を床に放った矢絃が起き上がった。
「なんでそんな、奏矢の話ばっかすんの」
「え?なんでって……言った通り一人で過ごすなんて稀じゃない?だから──」
「オレといんのに、違う男の名前ばっか聞きたくない」
「違う男って──」
兄弟、でしょ?
そう言葉を紡ごうとした。
だけど、
言えなかった。
私も体を起こしかけたところで、矢絃が迫ってきて……
塞がれたから。
……口を。
矢絃からの……キスで──
"何もされんな、絶対に"
すぐそばで言われたみたいに、
奏矢からのメッセージが、
奏矢の声が耳もとで聞こえた気がした。



