勝ってしばらくは矢絃と楽しそうにしていたのに、急におとなしくなって……他に何か悩ませることとかはないと思うのだけど。
「ねぇ奏矢、なんか他に気になってることとかあるの?」
「なんでんなこと聞くんだよ。別に、本当に終わったのかあのじーさんのことが信用できねぇだけだ」
それを言われると百パーセント信じられるわけではないのは確か。でも勝負を条件にして勝ったのはこっちなんだから、文句は言えないでしょ。言わせないし。
「大丈夫よ。ほとぼりがさめた時にあるかもしれないけど、しばらくはおとなしくなるでしょ」
「……だな。そろそろ部屋に戻る。矢絃、起きろ」
「食べていいやつ?オレの肉……?」
「人の腕で寝ぼけてんじゃねぇよ。食うな」
矢絃を揺さぶる奏矢の腕を掴まえて、矢絃は寝ながらも嬉しそう。
……というより食べる夢ばっか見てない?
「……離せって。ったく」
お肉……実際は奏矢の腕だけど絶対に離さんとする矢絃を奏矢はおぶった。
「仕方ねぇ、お休みお嬢」
「平気?」
「へーき。また明日な」
「うん。ゆっくり休んで」
廊下を曲がるまで、二人を見送っていれば途中にとうとう矢絃が腕に噛みついた。
いってぇ!、と奏矢の叫びが聞こえたけどまぁ大丈夫でしょ。
にしても……奏矢があんな浮かない顔するなんて珍しい。



