「慧お嬢様、こちらを」

「おうっ」

「慧、それは?」


秋葉さんが何やら紙一枚、慧に渡すものだからつい気になった。


「これは、せーやくしょだ!」

「誓約書?」

「はい、学園を通して許可は得ています。あちらの方に、一条様と今後一切の関わりを持たぬことを誓約させるものです。僭越ながらご用意させていただきました」

「秋葉がそうすればいいんじゃないかーって言ってくれてな。もうそれはやるしかないじゃん!みたいな」

「即行動の慧お嬢様、素晴らしかったですっ!」


拍手をする春夏冬さんに慧は照れ笑い。今回はばかりは秋葉さんも止めないみたい。
すぐに下におりた慧たち。かわりに奏矢と矢絃が上がってきた。

下では『ほら書け!』とサインさせてる慧。
その横にいる秋葉さんの黒い笑みの威圧。
春夏冬さんは何故か盤面を見ている。



「お嬢」


何事もなかったように、いつもの雰囲気を纏う二人が私のもとへとやって来た。


少しばかり目の奥が熱くなる。だけど今は……



「さすが私の執事っ……!!」




笑いたい。



「たり前だろうが」
「無敵っしょ?」



今度は三人で拳を合わせ、笑い合った。




「美青ー!サインもらったぞー!!」

「わぁー!」
「春夏冬」


掲げる誓約書に、グッジョブと指を立てれば、かなやいも秋葉さんたちに親指を立てた。
控えめに秋葉さんも返してくれて、春夏冬さんは手を振って喜ぶ。



……これで、じーちゃんとあのお坊ちゃんにも完璧に決着がついた。

縁談は、もう来ない。


私はひとり拳を握りしめた。