と、口を開きかけたところで、


「待てなくて来ちゃった……」

ひょこっとドアから顔を出す、慧。


「慧?……扉、オートロックのはずだけど?」
「執事くんたちが入った直後、ローファーを挟んどいたのさ」


なんてことをしてるんだ、この子は。


「とても褒められたものじゃない行いね。慧お嬢様?」

「あはは、それは仲良しってことで大目に見てくれよ。ほ、ほら!わたしの執事たちも、美青の執事くんと接する機会が増えるだろうし……改めて挨拶をと思ってさ」


自分の行いを濁すように、慧は自分の執事を外に待たせてあると、奏矢と矢絃を手招きする。
まぁ慧の言う通り、今日から約二年──お嬢様同士、執事同士顔を合わせる機会が自然と増えることは確か。
だから改めて挨拶をすることは、新生活において大事なこと。


「着替えは後回し。行こう」