そうであるなら、有り難いことだ。
……けど、私自身のことなのに執事である奏矢と矢絃に任せて何もしないのは、正直どうなのかと思っている。
いくら、奏矢がチェス勝負と言ったからって……本来なら、私がお坊ちゃんの相手をしなくてはならないはずなのに。
それに、今更だけど縁談は執事が突っ込んでいい話ではない。
「……美青、なーに浮かない顔してるんだよ」
「本当に……奏矢たちに任せて、私は何もしないっていうのはどうなのか、と」
「何もしてないことないだろ?……あの交流会で美青があのお坊ちゃんに放った言葉は素晴らしかった。それに美青のあの口調……わたしはどちらも好きだぞ」
「……ありがと」
あの日は自分の言葉遣いと発言に後悔して引きこもったりもしたけど、表裏のない慧にそう言われるのは素直に嬉しい。
「今更やっぱりやめるってわけにはいかないだろ。美形くんたちも真剣にやってるんだ。きっと、本番までに春夏冬からの太鼓判を押してもらえるさ」
「そうね」
私が二人に迷惑をかけたくないと悩んで白旗をあげるのはごめんだもの。
私も、奏矢と矢絃を信じよう。



