その場で"やれやれ"と慧が言うものだから、奏矢たちは二対二形式での練習を始めた──




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練習は暇さえあれば、矢絃が積極的に秋葉さんたちに声をかけ、繰り返し行われていた。

慧の言う通り、春夏冬さんは奏矢たちも唸るほどの腕前らしく。

『いつも頼りねぇけど、今回は大助かりだ』
『ドジ執事くん、やばいね。でも面白いよ』

と、かなやいが言うからすごくいい練習が出来てるのだと分かった。


登下校中の車の中でも、左右に座る二人の手が駒を動かしていて。

違う、こっちにこうすれば……なんて呟く声も聞こえていたから私は黙ってシミュレートの時間を見守った。



「──チェックメイト、です!」


「あー……今のがこうだったから……」

「もう一度」

「はいっ」

「やりましょう」


今も、今度は慧の部屋に呼ばれ執事四人はチェス勝負。
春夏冬さんにチェックメイトと言われ、即悩み出す矢絃にすぐ駒を並べ出す奏矢。

私と慧は私の部屋でお茶をしていたのだけど、こうしてドアの隙間から度々覗いている。


「……嫌な顔せず毎日何時間も、秋葉さんたちには後でちゃんとお礼をするわ」

「気にするな。春夏冬なんか子供みたいに楽しんでる。秋葉だって涼しい顔してるけど、楽しんでやってるさ」