『……いいのよ。全然いいのよ。むしろよくやったわ。私の執事最高ね』
『ほら、オジョーは怒らない』
『そりゃ分かってるけど。……お嬢、そう言うからには、俺らに任せてくれるってことだよな』
『当然よ──』
気負いはしていない二人に、頼もしさを覚え、私は本当に何も不安を抱いていない。
「やる気満々みたいだし、もともと矢絃はゲーム好きだから得意、奏矢は飲み込みの良さで心理戦までしてくるほどだもの。お坊ちゃん達がどうかは知らないけど、心配はしてないわ」
「……なるほど?それは頼もしいじゃないか。けど……けど、だ」
「けど?」
向かい合って座っていた慧が立ち上がる。
「いくら美形くんたちが強いとはいえ、練習しておくにこしたことはないだろ?」
「……私がやれと?」
チェスは嗜む程度で、得意と言い張れるわけではない。
当時、チェスのルールも全く知らなかったかなやいに教えたのは私と佐藤だったけど、今じゃ二人のほうが明らかに強い。
だけど慧は、違うと首を振った。
「うちの執事と、だ。……秋葉はともかく、春夏冬はいつもあんなんだが、チェスはなかなかの腕なんだぞ?秋葉も引けを取らないくらいだ。美形くんたちのいい練習相手になると思う」



