「懐かしいですねぇ、お嬢様がこのように引きこもりになるのは」
「そ、それは……言わないでよ」
「どういうことですか?」
「オレ気になる……じゃない、気になります」
微笑む佐藤は私の近くに歩いて来て、再度私に笑いかけ話し始めた。
「……お嬢様は二人が来る前、お嬢様なんて性に合わないと、自分が大企業のお嬢様であることをそれはそれは嫌っていたのですよ」
えっ、とかなやいから声がもれ、私は佐藤たちに顔が見えないようそらしながら、一応耳を傾ける。
「ですから、ドレスを着るのも豪華な食事も広々としたお部屋の全てを嫌い、いっときは口調も荒れておられました。……ふふっ」
「な、なによ」
過去の私を思い出す佐藤から、小さな笑い声が聞こえ目を向けると、佐藤は真っすぐと私を見据えた。
「いえ、今日のお嬢様は口調が荒れていた中で、一番素晴らしいお姿でしたよ」
「……え?」
大勢の前であんなことしておいて、素晴らしい?
「身内のことでもご友人のことでも、誰かのために怒る……これは簡単には出来ぬことです。それも面と向かって言い返すなんて」
「でも……あんなに人がいる中で本性を発揮するなんて最悪じゃない。普通の学校ならいいかもしれないけど。でも私は──」



