なぜ調べた──
離れたい──
なぜ私と話したい?──
離れたい──
なぜ?
この男が言葉を並べる最中に、体の中心がムカムカしてきた。でも抑えないと。トラブルにするわけにはいかない。
「それに……あなたが拾ったの男たちはまるで【行き場のない野良猫】のようだ」
行き場のない、野良猫──
イキバノナイ、ノラネコ──
この言葉が脳内で反芻され、
ぷつん。
私の中の冷静さが、おさえていた気持ちを爆発させた。
「──んな」
「ん?……なんと?」
なんとか拳を握り、自分を抑えたいと思ったけど……言っちまえ──
「ざっけんな……あんたがどう思うかなんて知ったこっちゃねぇんだよ。私の大事な執事を侮辱すんのもいい加減にしろ──!!」
会場に響く声とともに、ドリンクに手を伸ばしお坊ちゃんの顔をめがけ放つ。そして目の前で渡された紙を力いっぱい握りつぶした。
目を丸くして後退る姿を睨みつけると、お坊ちゃんはどこかへ走り去っていった。
握りつぶした紙をもっとぐちゃぐちゃにしていれば、静まり返った会場にハッと我に返った。
──や、やってしまった……!!
どう言い訳しても、無理がある。



