"簡易的にポイントだけをまとめたものですが"、と手渡された三つ折りにされた紙。


そこには、九重兄弟の生い立ちを要点だけしぼった内容が記されてあった。
私とお坊ちゃんの姿が見え、なおかつこの紙に何かしら嫌なことがあるのだと察したのか、横目に入る奏矢が一歩踏み出そうとしたのを私は制す。
それにダンスタイム中、何かトラブルがない限り執事がこちらにくるのは許されない。



「……これが何か?」

「驚かないのは知っているから、ですよね。何故一条家の方が迎え入れたのか、不思議で不思議で」

「そちらには関係ないことでは?」


紙をたたみ、笑顔を取り繕う。
なにも関係ない人物に調べられたとて、痛くも痒くもない。

しかしこのお坊ちゃんもまた笑顔を浮かべた。


「是非ね、この交流会で美青さんとお話したいと思って調べていたのに、そばに仕える"ワケアリの兄弟二人"が何者?と。気になってしょうがない。九重家は大企業との繋がりは全くないのに」


この男……私が知らないということは、それほど大きいとこのお坊ちゃんではない。
だけどなんだろう……このすごく嫌な感じは。


顔からも出てくる言葉からも、私の中でふつふつといろんな感情がわいてくる。