「もし着ないことで佐藤が何か言われたら、私から言うから。……奏矢、矢絃、靴や飾り、頼んでも?」
『かしこまりました』
持っていたドレスを箱へ雑に放り、かなやいは分かりやすくガッツポーズを見せ、部屋から出ていく。
その姿を佐藤も見てるけど、二人の言動や行動の荒さに多少は目をつむってはくれるから大丈夫。
私がいないところでやると、怒られるんだろうけども。
「……はぁ、やっと決まった」
ドレスを持ってきてからずっと立ったまま嫌々って言ってたからか、嫌なものを決めようとしたからか、地味に疲れベッドへ座った。
佐藤はドレスを綺麗にたたみ、箱へと戻していく。
「……我儘言ってごめんなさい。でも佐藤も分かるでしょ?私、あんな派手なのは──」
「ふふっ、分かっていますとも。……本音を言わせていただくと、私もお嬢様にはもっとエレガントな物を、と思っていましたから」
「佐藤……やっぱり分かってくれてたのね」
「ここだけのお話ですからね」
「……ここだけの話ね」
互いに口元へ指を立て、内緒だと頷き合う。
やはり佐藤は素敵な執事長だ。



