「──随分と実物はご立派だこと」


これからたまにしか顔を合わせなくなると、今日だけは送迎をしてくれた執事長の佐藤に礼を告げて三人……寮の前に立った私たち。

二年生から決められた寮生活。

パンフレットや資料で寮の外観は目にしていたけれど……さすがお嬢様の寮、って感じ。

正確にはお嬢様と執事の寮、だけども。


凝った庭のつくりから、西洋風のレンガの建物。
門も無駄に大きいから、全体的に重厚感はあるものの……ここまで凝る必要性はあるのか否か。

でも清潔感も漂っていて、気品さもあるから、学園のらしさも伝わるっちゃ伝わる。


「行こっか」


いちいち、お庭だ!とかもう思わないから、噴水も花も素通りし、早速中へ。
二人に案内されるままついていき、立ち止まった一番奥の部屋の前。


「学園と同じく、階段を挟んだあちら側が執事たちの。こちらの右側が、お嬢様方のフロアになります」
「なるほど……わかれていてもすぐに来れる距離なのね。まっすぐ見えるじゃない」
「……いつでも会えるってことです」

ぼそっと矢絃が言う"いつでも"が気になり、矢絃のことを一瞥した時、思い切り隣の部屋のドアが開いた。