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放課後、迎えのリムジンから見える景色がいつもと違い、左右にいる執事へと声をかけた。
「ねぇ……道、違うみたいだけど何処に向かってるの?寄り道をするなんて聞いてないのだけど」
キョロキョロとする私に、かなやいはいぶかしげな顔をする。
「……ちなみに、今日はなんの日かお分かりで?」
呆れ顔を隠すつもりがないのか、奏矢は私の方へ前のめりになった。
「今日?朝に始業式があったくらいでなんら変わりは……」
「……はぁ」
質問に答えれば、リムジン内で盛大な溜め息が返ってきた。
しかも矢絃までもが小さな溜め息をもらしたのが聞こえる。
「なに?重要なことなんてあった?」
二人してそんなに呆れるほど大事なことを、私は忘れてるってこと?
聞いたのにやれやれと頭を抱えられ、思い出してやろうと考えたけど、結局何も思い出されることはなく……
「あーもう、降参。何か教えて」
軽く両手をあげて降参の意思を示すと、またやれやれと肩を竦めながら、奏矢と矢絃は答えた。
「今日から二年生ですよね?」
「そうだけど?」
「……ってことは、今日から寮通いになるですよ」
寮、通い……?そう言えば春休み中にそんな話を……昨日も聞いた。



