重いけどいいの?お嬢サマ


──小さめのサウナに、露天……

いいとこの温泉なんて、久々に入ったものだから危うく待ち合わせの時間を過ぎそうになってしまった。
急いで髪を乾かしたからちょっと生乾き……すぐ寝るわけじゃないからいいけども。

小走りに外へ出れば、すでに二人が待っていた。


「ごめん」


「気にすん……待てお嬢そのまま」


動くな、と手で合図され訳がわからないまま立ち止まれば、奏矢も矢絃も私へスマホを向ける。
……何をされるのか分かったから、目を細めた。

案の定、すぐに連写音が聞こえて。


「ちょっと、オジョー可愛く撮りたいのに顔」
「……お嬢、バイキングに沢山スイーツあるらしいぜ?」
「え、ほんと?」


「よっしゃ今のばっちり」
「オレもばっちり」


……やられた。
スイーツって言われて、不覚にもほころんでしまった。


「……満足?荷物置いてはやくご飯行くわよ」


ひとりスタスタと歩き進めれば、後ろからかなやいが追いついてきた。


「またオジョーフォルダが潤った」


オジョーフォルダ……。


「風呂上がりの浴衣は初だもんなぁ、レアだレア」
「浴衣イベント発生中だから、撮りまくらないと」


なんともご満悦そうな二人ですこと。

楽しそうに話すかなやいの横顔は、学園で見せている顔より何倍も年相応な気がする。