**
「なーあー、お嬢ー」
「……なあに」
アフタヌーンティーの時間を静かに楽しんでいれば、用意してくれた奏矢が後ろから近付いてきた。
手にしていたティーカップを置くと、椅子に座るのかと思えば軽く後ろから手が回ってきて……。横から顔を覗かせた。
「ちょっと……!」
「いいじゃねぇか、俺と矢絃しかいねぇんだから」
「そういう問題じゃ……」
「それより、夏休みどっか行かねぇの?帰ってきてから、ずっと引きこもり生活じゃんかよ」
「確かにー」
矢絃は矢絃で、椅子に座ってお菓子に手を伸ばし始める。
「オジョーは、どっか行きたいところないの?……あ、うまいこれ」
「だって、どこもかしこも人ばかりだもの」
「そりゃ言えてる。でも夏休み終わるまでこのままじゃねぇだろ?」
と、言われても。
どこかに行きたい、という欲はあまりない。
「……そうね、強いて言うなら涼しいとこ、かな」
「じゃあ、海とか?そしたらオジョーの水着イベント発生じゃん。いいかも。むしろ行きたくなってきた。近くの海、検索」
水着、イベントとは……。
早速スマホで調べ出す矢絃に、奏矢は訝しげな顔をする。
「おい矢絃?海ってことは、お嬢のその姿が他のやつにもさらされるってこと──」
「ない。無理最悪。取り消し。却下」
はやっ……。



