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夏休みが訪れ、最初の数日間は浮かれる慧と執事たちをまじえて、慧が宿題を最後までやらないという秋葉さんの話から、宿題を一緒にやったり、ただお茶をしたり過ごした。
一日早く慧は実家へ戻り、私は今日帰ってきたところ。
「お嬢、荷物」
「ありがとう、でも大丈夫。皆に挨拶してまっすぐ部屋に行くから。二人も一旦部屋で休憩してきて?」
「分かったー」
寮の送迎係の人に送ってもらい、奏矢と矢絃を連れて私は久々に我が家の扉を開けた──
「お帰りなさいませ、お嬢様」
すぐさま出迎え、にこりと微笑む執事長。
「……っ佐藤!」
久しぶりに会う佐藤のもとへ駆け寄り、私は佐藤にハグを求めた。
というより、私から抱きついた。手に持っていたボストンバッグを床に置いて。
「ふふっ、お嬢様から佐藤のもとへ来てくださるなんて、嬉しいかぎりです。それに、お元気そうで安心いたしました」
ソフトに肩を支えてくれる佐藤。
やはり佐藤を見るとおちつく。
「……佐藤はいいね。安心感がすごい」
「それは良かったです。しかし……」
「ん?」
見上げる佐藤は、目を細め私の後ろを見ていた。だから私も体をひねり後ろを見てみる。
「執事たるもの、お嬢様の前でおもむろに自身の気持ちを顔に表すことは?」
『……しないこと』
「宜しい」
一瞬しか見れなかったけど、奏矢と矢絃がムスッと眉間にシワを寄せていたのが分かった。だから佐藤に指摘されたんだろう。



