「──よし、片付いたな。今年も楽勝じゃね?」


しゃがんで見つめているだけで、あっという間に周りに誰もいなくなった。
加勢してくれた慧たちに手を振れば、振り返しながらまたグラウンドの真ん中に戻っていく。


「お嬢、平気か」
「もちろん。おかげですごく平和だったわ」


奏矢の手をかりて立ち上がると、矢絃もボールを抱えて戻ってきた。コロコロと手からこぼれたボールを拾い上げれば、"ありがと"と言いながら矢絃は座り込んだ。


「はぁー疲れた。でもボールのストック増えたから次の勝負まで休憩」

「油断すんなよ、矢絃。お嬢もな」

「分かってるー。……ってかだいぶ減ったけど、うちのクラスのタスキの色、少なくない?オジョーとアキバンたちと……」


あ、アキバン?それ、秋葉さんのこと?
矢絃……そんなふうに呼んでたのね。本人には言わないだろうけど。


「あー確かに。去年より減りがはやくねぇか?タイムアップ前に過去最速で終わったりしてな」


一番激しく動いていた奏矢は、何もしてませんって感じで息ひとつ乱れてない。涼しい顔でグラウンドを見つめ、ニヤリと笑った。


「あ」
「ん、どしたのオジョー」
「春夏冬さんがやられた」


でも、慧の背中まもってた。春夏冬さんもナイス!


「うわー春夏冬ー!お前のことは忘れない!これから弔い合戦だ!」
「春夏冬は生きておりますよ、慧お嬢様」


なんとも慧らしい。春夏冬さんも泣く泣くグラウンドから去っていくし、秋葉さんは冷静だしで。