奏矢とは真逆になんともゆるい雰囲気の矢絃。
「お嬢、俺のボール頼むわ」
「え、ああ、うん。分かった」
後ろ向きのまま放られたボールを受け取り、奏矢と矢絃が前に出る。
矢絃が自分のボールを持ったままなのは、こちらにきたボールを弾き飛ばすためと突き指防止。去年もこの策を使っていた。
「あ、おい!大勢で美青たち狙いやめろ!行くぞ秋葉、春夏冬!」
私たちを囲みに来た生徒たちの後ろから、慧の騒ぐ声とこちらに向かってくる姿が見える。
「はっ、囲んだのがアダになってんじゃねぇか。お嬢は動くなよ。しゃがんで待ってろ」
しゃがむ私から数歩離れるかなやい。
慧たちが来たため、いっきに優勢となった。
それからはもうボールが飛び交い、奏矢の豪速球が次々に執事くんたちを倒していく。
「っし、次!」
「……おっと、よいしょー」
速っ、あぶな、と文句を言いながらも矢絃はボールを弾く。しかも奏矢の近くに。それを奏矢が投げていくからうまいこと連携してる……んだと思う。
「ぎゃあ!!来ないでください!!」
「うわっ落ち着け春夏冬!」
……人数の多さからか、テンパる春夏冬さんはボールをいろんな方向に投げる。だから慧や秋葉さんたちも被害にあってる……。
まぁ、味方からのボールは問題ないけど。



