昨日、端末に送られた結果を見てからずっとこの調子。それにこの会話も何十回と聞いた。
思い返せば、去年もこんな感じだったかもしれない。
二人は切り替えの良さがいいのか、不機嫌顔は周りには全くバレていないみたいだけど。


「とりあえず行くわよ」


この後のスポーツ祭、このままで大丈夫か不安。



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準備体操が終わり、十時ぴったりに開始の合図が鳴った。

護衛役の執事には各々ボール与えられ、投げればなくなり、キャッチまたは拾えばボールをためることが出来る。


「ぶっちゃけオレ、あんま自信ないんだけど……当たると地味に痛いし、突き指したくないし」
「矢絃」


グラウンドに全生徒が入り乱れ、それを私たちは様子見で眺めていた。
少しでも省エネで行きたいという矢絃は、だるそうにグラウンドを見つめるも、すぐさま指をほぐす奏矢から鋭い視線を向けられた。


「分かってるよ。ちゃんとやるし、オジョーには当てさせない。というか他の奴からのボール当てさせるとかないし。ボールでも勝手に触らないで欲しいしね」

「分かってるならいい」


そんな会話を聞いてるうちに、すでに何組もやられ、グラウンドの外にいるお嬢様と執事たちが出てきた。


「いい感じに見渡せるようになってきたじゃねぇか」
「えーこれで?まさか奏矢、あの中に突っ込むとかないよね?」
「しねぇよ。それに矢絃はともかく、この競技で去年生き残ってる俺を相手にしたいやつはいんのかね。もし……お嬢に投げてきたら、すぐにでもころ──」