アラサーの私が、なぜか御曹司で超絶イケメンの年下男子から、溺愛されました

客間に行くと、父と誠がいた。二人とも立ち上がりながら、まずシャチの縫ぐるみを見て、次に亮を見て怪訝な顔をした。

誠は『この間の男だよな?』と目で私に言い、『そうだけど、黙ってて』という意味を込め、小さく頷いて口パクで『しっ』と言った。誠に伝わったかは定かでないけど。

母にしたように亮を二人に紹介し、亮に父と誠を紹介し、コの字型の6人掛けのソファに腰を降ろした、のだけど、

「お茶をお出しするわね。葉子は手伝って?」

と母に言われ、私は亮に目配せして母に着いて行った。

「それ、どうしたの?」
「これはね、水族館のクじで当たったの。すごくない?」

「すごいけど、水族館って、誰と行ったのよ?」

あ、しまった……

「それは後で話す」
「そう? 取りあえず、どこかに置いて来なさいよ」
「あ、そうだよね」

私は居間に行き、ローテブルの上にシャチの”亮君”をそっと乗せ、チュッとキスをしてキッチンへ向かった。
そう、シャチの縫ぐるみの名前は”亮君”って、今決めたの。

「なんで野田さんは来てないの?」

お客様用のお茶を淹れながら、母は聞いてきた。当然の質問だと思うけど。

「それは……向こうで話す」
「そう? 彼、えっと吉田さんだったわね。どうしていらしたの?」

「それも向こうで話す」
「まさか、彼と水族館に行ったの?」

「それは……うん」
「あなた達、どうなってるのよ? それも”向こうで話す”なのね?」

「ごめんなさい」

二つのお盆に5人分のお茶とお茶菓子を乗せ、母に続いて客間へ戻った。
一旦は解れかけた緊張が、また戻って来てしまった。