アラサーの私が、なぜか御曹司で超絶イケメンの年下男子から、溺愛されました

吉田君が私を、”葉子先生”と呼んだ。

人生で私がそう呼ばれたのは、8年ぐらい前の教育実習の時だけだ。そして、そう呼んだのは一人の男子生徒だけ。その子が、亮君。

という事は……

「あなたは、亮君なの!?」

「そうだよ。いつになっても葉子は俺に気付いてくれないから、結構凹んだよ」

今、”葉子”って言った。それとタメ語になってる。いいんだけど。

「だって、名前が違うじゃない。正確には苗字だけど。亮君の苗字は”田中”だったはずよ?」

「俺は吉田家の養子だから。俺が中3の時、唯一の肉親の母親が死んで、吉田家に引き取られた。
その時に、俺の苗字は田中から吉田に変わったんだ。だから俺は、本物の御曹司じゃない」

前に神崎さんの事を”本物の御曹司”って言ったのは、そういう意味だったのね……
あ、でも待って。

「亮君は小さかったよ。それと、眼鏡を掛けてた」

「眼鏡はコンタクトに替えた。背は伸びたんだ。自分でも驚く程に。
あの頃は小さくて、クラスの奴からよく虐められてた。チビ、メガネ、妾の子ってね。

担任は見て見ぬふりで、耐えるしかなかった。でも、教育実習で来た若い先生は、俺の味方をしてくれた。虐める奴らに、泣きながら抗議してくれた。

そんな葉子先生を、俺はすぐに好きになった。美人で優しくて、正義感が強くて、頑張り屋さんで、大好きだった。俺の初恋だった」

私は思わず吉田君、ううん、亮君の頭を私の胸に引き寄せた。そして、涙がじわっと込み上げてきた。

「亮君、辛かったね。でも頑張ったんだよね。偉いね。気付かなくてごめんね。
もっと早く言ってくれれば良かったのに……」

「そういうのは、やめてほしい」

え?