アラサーの私が、なぜか御曹司で超絶イケメンの年下男子から、溺愛されました

「葉子さん、どこか怪我してませんか?」
「大丈夫。吉田君のおかげで。吉田君は?」
「全然です」

「そう? そう言えば、さっきのあれ、どうやったの? 野田さんを転ばせたやつ」
「あれは、”出足払い”です」
「それって、なに?」
「柔道の”投げ技”の一種です。基本中の基本ですけど」

吉田君って、柔道ができる人なんだ。すごいなあ。
柔道をする人って、体がガッチリして、いかつい印象だけど、そういう人だけじゃないのね。

「柔道はおやじさんから習ったんです。やってて良かったです」

気付けば、吉田君は半袖のTシャツしか着てない。昼間は初夏のようだけど、朝晩は冷え込む今の時期、それでは寒いんじゃないかな。いくら若くても。

「吉田君、寒くないの?」
「寒いです。帰りますか?」
「そうね。帰りましょう?」

ふと私はある事に気付いた。それは、吉田君は夕ご飯を食べていないんじゃ、という事。私は野田と食べたけども。

「待って。吉田君は夕ご飯、食べてないんでしょ?」
「しっかり食べましたよ。葉子さん達と同じ、イタリアンの店で」
「そうなの? 全然気付かなかった。という事は……」

『変装は無駄じゃなかった』

吉田君とハモり、互いに顔を見合わせ、笑っちゃった。

二人で並んで歩き、大きな通りに出ると吉田君はすっと手を上げ、空車のタクシーが停車した。