アラサーの私が、なぜか御曹司で超絶イケメンの年下男子から、溺愛されました

タクシーは目的地に着いた。つまり、都心近くの一流ホテルの正面。

こんな高級なホテル、入るのはもちろんのこと、間近で見るのも初めてだ。
私が呆然と立っていると、吉田君は微笑みながら私を見て、肘を突き出すような仕種をした。

え? あ、ああ、そうよね。

前に何かで見た事のある、女性が男性にエスコートされて歩く光景を思い浮かべ、今が正にそれだと思ったので、吉田君の腕を遠慮がちに持ち、私達はホテルへ入って行った。

吉田君は堂々と胸を張り、迷わず真っ直ぐ歩いてエレベーターに乗り込んだ。
彼はここに来た事があるのかしら。あるいは、来慣れてたりして?

私は不意にある事を思い出し、それを口にした。

「ドレスコードは大丈夫かしら?」

たしか、高級なレストランにはドレスコードなるものがあるはずだわ。

「そうですねー。二人ともセーフじゃないかな。ギリだけど」

ギリギリなんだあ。それと……

「恥ずかしいんだけど、テーブルマナーにも自信がないの」
「ビュッフェだから大丈夫ですよ。気にせず、好きなものを、たらふく食べましょう?」
「そ、そうね」

本来、私はビュッフェって大好きなんだけど、高級レストランのビュッフェって経験が無いから、緊張してしまう。
たらふくなんて、食べられないと思う。さっきまではあった空腹感は、今はどこかへ行っちゃった気がした。