アラサーの私が、なぜか御曹司で超絶イケメンの年下男子から、溺愛されました

ここでも吉田君とはテーブルを挟んで座り、ホットコーヒーをブラックのまま口に含んだ。
いつもは砂糖やミルクを多めに入れるんだけど、ブラックで飲めば眠気覚ましになるかなと思って。でも、私って体質的にカフェインはあまり効かないみたいだから、今回も効果は期待できないかなと思った。

「葉子さん」
「ん?」
「機嫌はもう直ったみたいですね?」

正面の吉田君が、同じくブラックのコーヒーを一口すすり、カップをカチャっとお皿に置きながらそう言った。微笑んだような顔を私に向けて。

「それって、森山明美のこと?」
「じゃなくて、その前。セクハラとか言って、怒ってたじゃないですか」

ああ、そっちか。吉田君が私のことを”可愛い”とかって、からかったのよね。それで私はすごく怒ったんだった。

「あの時はごめんなさい。私が大人げなかったわ。冗談も通じない女、って思ったでしょ?」
「冗談なんかじゃないですよ。俺は本気で……」

「はいはい、冗談でなけば社交辞令かしら。だとしたら、どうもありがとう」
「ちょっと、違うって、葉子さん……」

「おしゃべりはこれくらいにして、研修の続きをしましょ?
吉田君は知ってると思うけど、うちの会社は本社が4つあって……」

吉田君は、まだ何か言いたげだったけど、私は強引に研修の続きを始め、組織やシステムの構成その他について、資料は使わずに早口でしゃべりまくった。そうでもしないと、たちまち睡魔に負けそうだったから。