アラサーの私が、なぜか御曹司で超絶イケメンの年下男子から、溺愛されました

「待ってください。あの……アタシのミスですみませんでした!」

吉田君とその場を立ち去ろうとしたら、森山明美が立ってこちらを見ていた。正確には、吉田君をだけど。媚びるような、上目遣いで。

「謝る相手が違うんじゃないですか?」

低い声で吉田君が言った。たぶん、すごく怒ってるんだと思う。

「へ?」

それが森山明美に伝わっていないのか、ヘラヘラしながら吉田君を見ている。その、メイクが施された目に涙はなく、やはりウソ泣きだったらしい。

「あなたのミスを、徹夜でリカバリーしたのは北野さんなんですから」
「あ、あ……すみませんでした!」

森山明美は、今度は私に向かってペコっと頭を下げた。

「マスターメンテの後は、よくチェックするようにしてください」
「は、はい」

恨めしそうに私を見る森山明美に背を向け、吉田君と私は静まり返った管理部を後にした、のだけど……

「ちょ、ちょっと……」

吉田君の手が、私の肩に乗せられたまま、と言うより、肩を抱かれている事に気付き、私は慌てて彼の手をどけた。
森山明美が恨めしそうに見てたのも、周囲が静まり返ったのも、これが原因だったのかもしれない。