【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜




 そうして今現在、セドリックの言葉の意味を瞬時に悟ったシオンは、居ても立っても居られずに部屋を飛び出し、暗い庭園を駆け抜けていた。

「姉さん……!」――と、姉の名を恋しく呼びながら、月明りだけを頼りに、エリスの姿を求めてひた走る。


 ――今、シオンを駆り立てているのは強い焦燥だった。

 セドリックの答えを聞いたシオンは、どうしてもエリスに確かめなければならないと思った。

『この二週間、姉さんがずっと一緒にいてくれたのは、僕に負い目を感じていたからなのか?』――と。

 自分を泊めるようアレクシスに頼んてくれたことも、毎日お茶を振る舞ってくれたことも、エリスとアレクシスが二人きりにならないよう邪魔をする自分を、決して(とが)めなかったのも……。

(すべては、幼い(ぼく)を守れなかったことに対する、罪悪感のせいだった……?)

 そんなはずないと思いたいのに、一度考えだすと止まらなくなる。
 愛故と思っていたエリスの行動が、実際は負い目からくるものだとしたら、自分はなんと愚かなことをしてしまったのだろう、と。