そうこうしているうちに自宅へ帰ってきたようだった。
キリコとは小学校が違ったので、このあたりのことは詳しくないが、全く知らない土地ではない。
学校へ行くのも問題なさそう。
たぶんキリコはひとりで登校している。今朝だってひとりでやってきて、あたしの腕を引っ張ったんだから。
車ごとガレージに入っていって、自動でシャッターが下りた。
キリコの母親が車に乗り込んだときから差を見せつけられた気がしていたが、キリコの家はお金持ちらしい。
無駄に広い玄関を抜けて居間へ入る。
右手はダイニングテーブル、その奥に開放的なキッチンがあって、左手は革張りのソファーだ。大きなテレビが壁に掛けてあって、すっきりした内装。
泥棒もどこから物色しようか迷うほどあまりものが置かれていない。
とりあえずソファーに座る。
「仕事に戻るけど、大丈夫ね?」
「うん……」
顔も見ずに素っ気なくうなずく。
レントゲンも一応撮ったが、キリコも花音もどちらの身体にも異常はなかった。
腰に痛みはあるがキリコママがそばにいても痛みが減るわけでもない。
普通に歩けるし、手を借りたいこともなかった。
……。
キリコママの視線を感じる。
キリコになりきれているのか不安だ。
あたしって意外と度胸がない。このあと、どうすればいいんだろう。
他人になりきるのは思ってたより難しい。
仲のいい双葉だって友梨奈だって、親とどんなノリで会話をしているかなんてまったくわからない。
ましてやキリコが家でも無口なのか、お行儀のいい子なのか、ふてぶてしいのかまったく想像がつかなかった。
「お昼は適当にデリバリー頼んで」
「わかった」
キリコママはそういうけど、お金を渡そうとしなかった。
ってことは、キリコがお金を払わなくてもデリバリーできるアプリがキリコのスマホに入っているということなのか?
だったら、スマホをいじるふりして――。待てよ。キリコってどんなスマホだった? 親が把握してないスマホを持っているってのは、結構な問題だぞ。
ここはいったん部屋へ戻った方がよさそう。
立ち上がって部屋を出ようとすると「桐子」と呼び止められた。
「なに?」
さすがに無視するわけにいかないので振り返る。
キリコママはメイクも嫌みがなくて上品な人だった。
さっき病院で顔を合わせたうちの母親は所詮取り繕っているだけの人だ。世話の焼ける子でとかなんだとかペラペラひとりでしゃべっていて、即刻黙らせたかった。
たぶん、キリコは自分の親を恥ずかしいと思ったことがないはず。それくらいキリコママは隙がない。
なんでキリコみたいな子供がいるんだって不思議なくらい。
キリコママはじっとあたしを見つめた。
「なんかあった?」
何気なく聞いてくるけど、なにかあったことに気がついているとでも言いたげだった。
ちょっとイラッとする。キリコママはいつものキリコと違うことに気がついている。
うちのママはどうだろうか。
「別に」
いつも親に言ってるみたいに、面倒くさそうに言ってしまい、これでよかったかわからず慌ててドアを閉めた。
キリコとは小学校が違ったので、このあたりのことは詳しくないが、全く知らない土地ではない。
学校へ行くのも問題なさそう。
たぶんキリコはひとりで登校している。今朝だってひとりでやってきて、あたしの腕を引っ張ったんだから。
車ごとガレージに入っていって、自動でシャッターが下りた。
キリコの母親が車に乗り込んだときから差を見せつけられた気がしていたが、キリコの家はお金持ちらしい。
無駄に広い玄関を抜けて居間へ入る。
右手はダイニングテーブル、その奥に開放的なキッチンがあって、左手は革張りのソファーだ。大きなテレビが壁に掛けてあって、すっきりした内装。
泥棒もどこから物色しようか迷うほどあまりものが置かれていない。
とりあえずソファーに座る。
「仕事に戻るけど、大丈夫ね?」
「うん……」
顔も見ずに素っ気なくうなずく。
レントゲンも一応撮ったが、キリコも花音もどちらの身体にも異常はなかった。
腰に痛みはあるがキリコママがそばにいても痛みが減るわけでもない。
普通に歩けるし、手を借りたいこともなかった。
……。
キリコママの視線を感じる。
キリコになりきれているのか不安だ。
あたしって意外と度胸がない。このあと、どうすればいいんだろう。
他人になりきるのは思ってたより難しい。
仲のいい双葉だって友梨奈だって、親とどんなノリで会話をしているかなんてまったくわからない。
ましてやキリコが家でも無口なのか、お行儀のいい子なのか、ふてぶてしいのかまったく想像がつかなかった。
「お昼は適当にデリバリー頼んで」
「わかった」
キリコママはそういうけど、お金を渡そうとしなかった。
ってことは、キリコがお金を払わなくてもデリバリーできるアプリがキリコのスマホに入っているということなのか?
だったら、スマホをいじるふりして――。待てよ。キリコってどんなスマホだった? 親が把握してないスマホを持っているってのは、結構な問題だぞ。
ここはいったん部屋へ戻った方がよさそう。
立ち上がって部屋を出ようとすると「桐子」と呼び止められた。
「なに?」
さすがに無視するわけにいかないので振り返る。
キリコママはメイクも嫌みがなくて上品な人だった。
さっき病院で顔を合わせたうちの母親は所詮取り繕っているだけの人だ。世話の焼ける子でとかなんだとかペラペラひとりでしゃべっていて、即刻黙らせたかった。
たぶん、キリコは自分の親を恥ずかしいと思ったことがないはず。それくらいキリコママは隙がない。
なんでキリコみたいな子供がいるんだって不思議なくらい。
キリコママはじっとあたしを見つめた。
「なんかあった?」
何気なく聞いてくるけど、なにかあったことに気がついているとでも言いたげだった。
ちょっとイラッとする。キリコママはいつものキリコと違うことに気がついている。
うちのママはどうだろうか。
「別に」
いつも親に言ってるみたいに、面倒くさそうに言ってしまい、これでよかったかわからず慌ててドアを閉めた。



