キリコの世界は謎だ。ってゆうか、とんだ疫病神だ。
なんかヤバいことに巻き込まれてるなら、なおさらキリコでなんかいられない。
まさか、今回の件にあの先輩たちが一枚かんでいるってことはないよね?
――いや、そうだとしたら、キリコの中身が別人なのかを確認するようなたずね方をするだろうし。
あたしはひとり、通い慣れた道をひたすらに歩いて音無家の近くまで来ていた。
ここまで来れば一緒に三人が帰っていたとしても、双葉と友梨奈とは別れている。邪魔者はいない。
あーあ、散々な日だった――
と、一日を総括するにはまだ早い。
とにかく、あたしたちは話をする必要があるし、中身の入れ替わりが不可能なら家に入って持ち帰りたいものもある。
夕暮れにはまだまだ時間はある。だけど遅くならないうちに済ませたい。
なのに、なんで来ないの。
通りから少し外れた住宅街で人通りの少ない場所だ。待ち合わせをするような場所じゃないからウロウロしていたら目立つ。
もう、さっさと帰ってきなさいよ。
ひとりごとをぶつぶついってたら、声が聞こえてきた。
まさか、双葉か? 相変わらずやかましくさわいでいる。
めったにうちに来ることないのに、なんで今日に限って。
あたしは見つからないように陰に隠れた。
やはり、双葉の声だった。友梨奈までいる。
キリコのヤツ。あたしが待ち伏せているのを見越して、わざとふたりを誘ったのかもしれない。
だが、ここで帰るわけにもいかない。
明日も学校だからまさか泊まることはない。腹をくくってふたりが帰るのを待つしかなかった。
そして――日が沈むころ。ようやくふたりは出てきた。
バイバイと手を振って、見送りに通りまで出てきたキリコが玄関へと戻っていく。猛ダッシュで追いかけ、玄関のドアが閉まる寸前でしがみついた。
「うわっ! なに、びっくりするじゃない」
キリコは胸元を手で押さえ、目を丸めた。
「びっくりするじゃないよ。ずっと待ってたんだから」
あたしはキリコを押しのけて入っていく。
勝手知ったる我が家だ。二階の自分の部屋へと向かった。
もうこれ以上の邪魔はできないと観念したのかキリコもおとなし階段を上ってくる。また後ろから引きずり落とそうとか、なにかたくらんでいるんじゃ……。
あ、そうか。あたしが自分で落ちればいいんだ。
くるっと振り返ってキリコを見下ろす。
「無駄だよ」
キリコは間髪入れずに言った。あたしのたくらみはお見通しらしい。
「やってみないとわからないでしょ。それとも、自分の体に戻りたくないとか?」
あたしはキリコに探りを入れてみた。
キリコの考えていることがまったくわからない。
するとキリコは両手を広げてあたしを待ち構えた。
「なら、やってみる?」
なんだろ。この余裕は。そんなことでは元に戻れないのか?
「キリコ……本当は、入れ替わり方、知ってるの?」
「知るわけないでしょ。痛い思いをしたくないだけ。用事があるなら早くしたほうがいいんじゃない?」
こんなところで転がり落ちたら、入れ替わっても入れ替わらなくても、騒ぎになって大変だ。
ひとまず持ち帰りたいものをバッグに詰めよう。
スマホもお金もないじゃ、悲惨すぎる。
なんかヤバいことに巻き込まれてるなら、なおさらキリコでなんかいられない。
まさか、今回の件にあの先輩たちが一枚かんでいるってことはないよね?
――いや、そうだとしたら、キリコの中身が別人なのかを確認するようなたずね方をするだろうし。
あたしはひとり、通い慣れた道をひたすらに歩いて音無家の近くまで来ていた。
ここまで来れば一緒に三人が帰っていたとしても、双葉と友梨奈とは別れている。邪魔者はいない。
あーあ、散々な日だった――
と、一日を総括するにはまだ早い。
とにかく、あたしたちは話をする必要があるし、中身の入れ替わりが不可能なら家に入って持ち帰りたいものもある。
夕暮れにはまだまだ時間はある。だけど遅くならないうちに済ませたい。
なのに、なんで来ないの。
通りから少し外れた住宅街で人通りの少ない場所だ。待ち合わせをするような場所じゃないからウロウロしていたら目立つ。
もう、さっさと帰ってきなさいよ。
ひとりごとをぶつぶついってたら、声が聞こえてきた。
まさか、双葉か? 相変わらずやかましくさわいでいる。
めったにうちに来ることないのに、なんで今日に限って。
あたしは見つからないように陰に隠れた。
やはり、双葉の声だった。友梨奈までいる。
キリコのヤツ。あたしが待ち伏せているのを見越して、わざとふたりを誘ったのかもしれない。
だが、ここで帰るわけにもいかない。
明日も学校だからまさか泊まることはない。腹をくくってふたりが帰るのを待つしかなかった。
そして――日が沈むころ。ようやくふたりは出てきた。
バイバイと手を振って、見送りに通りまで出てきたキリコが玄関へと戻っていく。猛ダッシュで追いかけ、玄関のドアが閉まる寸前でしがみついた。
「うわっ! なに、びっくりするじゃない」
キリコは胸元を手で押さえ、目を丸めた。
「びっくりするじゃないよ。ずっと待ってたんだから」
あたしはキリコを押しのけて入っていく。
勝手知ったる我が家だ。二階の自分の部屋へと向かった。
もうこれ以上の邪魔はできないと観念したのかキリコもおとなし階段を上ってくる。また後ろから引きずり落とそうとか、なにかたくらんでいるんじゃ……。
あ、そうか。あたしが自分で落ちればいいんだ。
くるっと振り返ってキリコを見下ろす。
「無駄だよ」
キリコは間髪入れずに言った。あたしのたくらみはお見通しらしい。
「やってみないとわからないでしょ。それとも、自分の体に戻りたくないとか?」
あたしはキリコに探りを入れてみた。
キリコの考えていることがまったくわからない。
するとキリコは両手を広げてあたしを待ち構えた。
「なら、やってみる?」
なんだろ。この余裕は。そんなことでは元に戻れないのか?
「キリコ……本当は、入れ替わり方、知ってるの?」
「知るわけないでしょ。痛い思いをしたくないだけ。用事があるなら早くしたほうがいいんじゃない?」
こんなところで転がり落ちたら、入れ替わっても入れ替わらなくても、騒ぎになって大変だ。
ひとまず持ち帰りたいものをバッグに詰めよう。
スマホもお金もないじゃ、悲惨すぎる。



