王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

ー翌日のお昼休み、

碧人様は来なかった。

私も誘いに行くことができなかった。



翔に「どうした?」とお昼休みに話しかけられ、



さつき様を碧人様の家に誘ったこと、

私たちのことを勘違いして、

さつき様に2人のことを応援していると言われたこと、それを碧人様に聞かれてしまい…



と一連の流れを伝えた。



ーさすがにキスされたことは、翔には言えなかった。



「なんか大変なことになってるなー。

もっと単純に考えた方がいいんじゃないか?」



「単純ってどういうこと?」



「西園寺が例えば柏原のことが好きだったとする。


でも西園寺はアタックしてないんだから、

柏原とどうなりたいって訳じゃないんじゃないか?」



ー確かに、その通りかもしれない。
私がいる限り…



「正直俺だって西園寺の気持ちはわからない。

でも、大事なのは自分の気持ちじゃないか?」



「自分の気持ち?」



「そう。

他に好きな人がいる人と結婚したくないっていうなら、それもありだと思うぞ。」



ーそういう訳じゃない。



「ただ、そうであっても、

自分が結婚して隣で支えたいっていう考えもあるだろう。

美姫はどうしたいんだ?」



私は、碧人様が好きな人と上手くいくなら、

その方がいいと思ってたー、

でも、それでも私と結婚していいと思ってくれるのならー、

「私は碧人様が好き。
他に好きな人がいても一緒にいたい」

そう翔に伝えた。



「よし、それを西園寺に伝えろ。

人の気持ちなんてわからないんだから、

自分から伝えていかないと。」



「うん、ありがとう。」



翔の言う通りだと思った。



碧人様の考えを頭で想像してもわからない、

きっと碧人様も私の気持ちをわかっていないと思う。



ー私は碧人様に自分の気持ちを伝えることを決めた。





この時、

碧人様が遠くから私たちのことを見ていたことに、全然気付かなかった。