拝啓、愛すべき総長サマ。



静まり返っていた教室に、担任だと思われる先生が入ってきたことにより少しだけ空気が和らいだ。

しかし、潔木くんの機嫌はまだ悪いみたいで。

舌打ちをしてから私に触れていた手を離すと、そのまま席につくことなく教室の後ろのドアの方へと向かって歩いていく。

その後を続くようにして、潔木くんと共に教室に入ってきたヤンキー達も席を立ち…ゾロゾロと出ていってしまう。

「あの…先生、止めなくていいんですか?」

教卓の前で一部始終を傍観していた先生に、思わず声を掛けてしまったのだが…気の弱そうな小柄な中年の男性教諭は曖昧に笑っただけで、何も言うことは無かった。

その後、教室は一気に騒がしくなり…先生の話しを聞く生徒など誰一人存在ぜず。初日にしてもう既に、授業崩壊が起きている。

そんな中…クラスメイトの一人が親切にも、先程私が先生に尋ねた質問の答えを教えてくれる。

「この学校で潔木に刃向かおうなんて奴は…居ないよ。お前、自分が何をしたかまだ分かってないみたいだけど…多分、退学にされると思うぞ。」

「……え?!退学っ?!!」

私に答えをくれた彼は、自らのことを杉野 優生と名乗り…先程までピンク頭が座っていた私の前の席に腰掛けた。

「潔木の前の席に座ってた奴、覚えてる?」

「い、いや…ピンク頭と茶髪の関西弁しか記憶にないかな。」

「あぁ…神崎と風間な。」


私が彼らのことを何も知らないと察したのか、杉野くんはご丁寧に…彼らのプロフィールを紹介してくれた。