「あの…潔木北人さん、」

「フルネームで呼ぶな。ムカつく。」


──名前呼んだだけでムカつくって、何?!

早速飛んできた反抗的な言葉に、胸がドキンドキンと高鳴る。……新鮮だ。


「えっと……じゃあ、潔木くん。」

「…なに」


机に顔を伏せたままだが、返事をしてくれたことが嬉しくて…頬が緩む。


「お互いの自己紹介、しませんか?」

「断る」

「即答ですか…」

「俺の名前、知ってんだろ」

「私の名前は?知らないですよね?」

「……興味ねぇーよ」


こんな風に冷たく突き放されたのは人生で初めてのことだ。ますます彼のことが知りたくなるし、私のことも知って欲しい。


「多岐川 律花といいます。好きな食べ物は甘いもの全般で、苦手な食べ物はキクラゲ。」

「キクラゲ…?」

「あれ?興味、出てきた感じですか!?キクラゲというのはキノコの一種で、」

「それは知ってる」

「知ってたの?!私、あれがキノコだってことを最近知って凄く驚いたよ。潔木くんも驚いた?」

「あのさ…お前、バカなの?」

「…ん?言われたことないけどなぁ」

「周りにいたやつもバカばっかりだったんだな」


……それは否定出来ないな。