「辛い事聞いて悪かった」

「いいえ、そのおかげで社長にデートに誘って頂いて、私一人じゃ来ることも出来ないレストランで食事出来て、もう心臓がドキドキしてます」

「俺と付き合わないか」

「はい?」

「俺をつぐみの恋人にしてくれないか」

(なんて言ったの?俺と付き合わないかって言ったよね、俺を恋人にしてくれないかとも聞こえたけど……)

「実は母親が恋人がいないなら、見合いをしろと言ってきたんだ、そろそろ結婚しろと」

つぐみは黙って光高の話を聞いていた。

「暫くの間、俺の恋人の振りを頼みたい」

(なんだ、ビックリした、恋人の振り、だよね)

「でも、私なんかじゃ、社長の恋人に不釣り合いです、お母様に反対されますよ」

「そんなことはないよ、つぐみはいつも一生懸命仕事に取り組んでいるし、誰に対しても、笑顔を絶やさない、信頼おける女性だ」

「ありがとうございます」

「どうかな、何も難しいことはないよ、俺と付き合ってくれればいいから」

(社長の恋人がハードル高いんだって、でも振りだし、本当に付き合う訳じゃないしね)