かりそめの恋人なのに、溺愛が止まりません

「でも、私は振られたんですよ、たとえかりそめでも、私はもう光高さんの妻なんですから」

(かりそめ、そうだった、俺の気持ちをつぐみに伝えておかなければ……)

「つぐみ、俺はお前を……」

そう言いかけた時、車はマンションに到着した。

「あのう、買い物をまだ済ませていないので、冷蔵庫が空っぽなんです、夕食をどうすればいいでしょうか」

つぐみは光高にそう声をかけた。

「そ、そうか、それならこのまま食事に行こう」

(つぐみの気持ちを確かめずに、俺の気持ちをぶつけてどうする、つぐみはまだ柿崎を愛しているんじゃないか)

光高とつぐみは食事に出かけたのだった。

柿崎はつぐみに別れを告げたことを後悔していた。

(こんなにもつぐみのいない生活が無に等しいなんて)

そんなある日、人身事故で電車が止まった。

運転見合わせで、しばらく動かないとの事態だった。

その電車に得意先から会社に戻る柿崎と友達とランチをしてマンションに戻るつぐみが居合わせた。

「つぐみ」