かりそめの恋人なのに、溺愛が止まりません

そんなある日、つぐみは買い物先で、偶然に柿崎に声をかけられた。

「つぐみ、つぐみ」

つぐみは声のする方へ顔を向けると、そこには柿崎が立っていた。

「正臣、どうしたの?」

「取引先に行ってきたとこ、つぐみは?」

「私は買い物に行くところよ」

「そうなんだ、ちょっと時間あるなら、昼飯付き合ってくれないか」

つぐみはすぐには答えられず、強引に手を引っ張って、ファミレスに連れて行かれた。

柿崎はいつもつぐみの意見は聞かない。

勝手に決めて、行動に移してしまう。

「驚いたよ、社長夫人だもんな」

(かりそめなんだけどなあ)

つぐみは俯いたまま黙っていた。
そんな二人を見つめていたのは光高だった。

(つぐみ、一緒にいるのは柿崎じゃないか)