「光高さん、泊まる必要ありますか」

「つぐみはお前を振った元恋人のうちに泊まらなかったのか」

「泊まりました、と言うより、一緒に暮らしていました」

つぐみの言葉に光高の表情がパッと輝いた。

「そうだ、ここに引っ越してこい」

「はあ?」

「もしかして、母親が突然やってくるかもしれない」

(いやいや、ありえないでしょ)

ところが、次の瞬間、インターホンが鳴った。

光高とつぐみは顔を見合わせた。

光高はインターホンに対応した。

「光高さん、開けてちょうだい」

光高の予想通り、母親だった。

母親は遠慮せず、ずかずかと部屋に入ってきた。

「あら、居たのね、もしかしてカムフラージュかと思ったけど違ったみたいね」
つぐみはこくりと息をのんだ。

(確かめにきたんだ、危なかった、あのまま、アパートに帰っていたら何を言われるか)