スノードロップを供えて

私は今、葬式に来ている。

一輪の白く美しいスノードロップを抱えて。

右目から涙を流した。口角が上がるのを抑えて。

「大丈夫か?大事な友達が、目の前で亡くなるなんてな...」

「うん...ほんと、足を踏み外すなんて...」

足を踏み外して、海に落ちたことにしている。

誰も真相に気付かない。気付こうとすらしない。

みーんな、馬鹿なんだよ。

ふふっ、と高い声が微かに洩れて、私は嗚咽を洩らしているふりをした。

顔を伏せて、口角が上がるのを隠す。


私は、スノードロップを供えた。