――それから私と彼は、引っ越しを機に離れ離れに。
手料理を食べさせてあげることはできなくなってしまったけど、インスタのアカウントを復活させて、料理にお菓子と再び彼の目を楽しませている。
メリットはもう一つ。
最後にお弁当を渡した日以降口をきいてなかった莉麻ちゃんから、『あのときはごめんね』というDMが届いた。
いまは投稿した料理画像に毎回いいねを押してくれる。
あのときはお互いを理解しようともせずに衝突してしまったけど、いま考えれば私たちにとって必要な時間だった。
内面的に向きあってくれたのも、最後に背中を押してくれたのも彼女だったから。
彼と不釣り合いだと思っていたのは、隣に並ぶ努力を怠っていただけ。
それに気づいてから考えが少し大人になった。
彼にふさわしい女性になりたいと思って、会えない時間を利用して本気のダイエットに挑戦。
毎日10キロ走って、得意な料理でカロリー制限。
リバウンドをしたり、停滞期が訪れたり、食べたいものを我慢するなど苦しい日々が続いたけど、40キロ減量したら顔が変わった。
自分でもこんな顔をしていたんだって驚くほど。
お腹の皮が伸びるのはダイエットを頑張った証。
もう弱虫な自分には戻らない。
――そして、クリスマスの今日。
二度と弱音を吐かないように、生まれ変わった姿で彼と会う。
パンパンに膨れ上がった気持ち。そして、お気に入りの紫色のワンピース姿で、すみれ柄のお弁当袋を胸に抱えながら……。
【完】



