「行ってらっしゃい・・・お姉ちゃん」
「涼翔・・・うん、行ってきます。長期休暇には帰ってくるからね」
私・百々(とと)心森(みもり)は、都内の名門校に行くために、家を出て1人で上京することになった。
不登校で2歳下の弟・涼翔(りょうか)を置いていくのは心苦しいけど・・・。
私が入学する、水殿(すいでん)大学付属高等学校は、入学できれば人生勝ち組といわれる大学の付属高校。
通称水学(すいがく)は、神奈川県の家から通うには遠い東京の学校。
だから、学校から自転車で約40分のアパート・桃園(ももぞの)に住むことになっている。
家賃が安いぶん、ホントにオープンな感じて、部屋の鍵を持っていれば・・・いや、持っていなくても不法侵入が可能なレベルだ。
まぁ、住むのは貧乏人、盗るものなんてないイメージだから空き巣も入らならしいんだけど。
このことは、涼翔にもすごく心配された。
お父さんとお母さんは仕事熱心な人で、めったに家に帰ってこない。
でもしっかり愛されてる自覚はある・・・んだけど。
私は、人よりもできるコトの範囲は大きいしレベルも高い。
そんな私と比べられるには、不登校という大きな差がある涼翔は、両親にお世辞でも愛されているとは言い難かった。
それもあって上京するのは悩みに悩んだんだけど・・・私が将来いい仕事についたら、両親には今までお世話になったぶんしっかり仕送りしながら、涼翔と一緒に住もうと思っている。
この先の人生のことを考えると、高校、大学の合計7年は、涼翔に我慢してもらうコトにんした。
長期休暇は必ず会うコトも約束して。