双子の妹はカエルのお姫様①



ベンチに座ったあと、私は鞄からお弁当を取り出した。


昼食のお弁当はいつも執事に作ってもらっている。
料理にかける情熱が凄まじい私と同世代の男で、毎回クオリティが高い。


前はこっそり料理の腕を上げたくて自分で作ってたんだけど、その場面を見られてからは「これはオレの仕事っス!」と言われて横取りされてしまった。


「おお〜……今日もまた驚きの出来栄え……」


横取りするだけあって本当に上手いんだよねぇ。
お弁当の蓋を開けた私は、思わずうんうんと頷く。


執事だから当然と言っちゃ当然かもしれないけど、他の執事さんに負けないくらい料理の腕は一流だと思うんだ。


「いただきます」


私はお箸を持って、まず副菜から口にする。
美味しい。思わず笑みが零れた。


春の日差しを浴びながら食べるお弁当は本当に格別だ。天気も良くて身体も調子がいい。

もぐもぐと、ゆっくり噛みながら味わう。
やっぱりこのひとときは何度繰り返しても毎回幸せを感じる。


「……わっ」


そのとき、強風が吹いて、鼻下まで伸びる前髪が靡いた。しかしスプレーで軽く固めているので、すぐに元の状態に戻る。邪魔だ。


うん、これは自分でもちょっと長過ぎだと思う。
いやもうちょっとどころじゃ済まない。


学園での私は、常に前髪を下ろして顔半分を隠している。
本音を言えばかなり鬱陶しい。頬に毛先が擦れてむずむずするし。


そして黒髪というのが、絶妙に不気味さを醸し出している。


鈴蘭は色素が薄い髪の母譲り、私は黒髪の父譲り。双子だが見事に容姿が分かれていた。


学園で自分の顔をさらしたことはない。


中学生のときに読んでいた小説の設定と、今の私の容姿が一致していて非常に笑える。


ほら、ひと昔前に流行った『地味で不気味な見た目の主人公が実は誰もが振り向く美少女だった』と言うやつ。


……私は、どうなんだろうね。自分の顔を評価したことがないのでわからないし。

なにより私は、大勢の人の前で素顔を見せなくなって、もう10年という長い年月が経っている。