双子の妹はカエルのお姫様①



「おはようございます。つぼみお嬢様、鈴蘭お嬢様」

エントランスでリュウに見送られ、私と鈴蘭は待っていた鈴木さんに挨拶をして車に乗り込んだ。

「では出発いたします」

鈴木さんは静かに車を走らせる。車内は今日も今日とて静かだ。

沈黙が気まずいときもあるけれど、私から鈴蘭に話しかけることは滅多にない。ぽろっと素が出たら怖いからね。

だけど返答くらいはする。無視は人としてあまり褒められたものじゃないし。

「あ、あの、つぼみちゃん」
「なんですか?」

口を開いた鈴蘭は、居ずらそうにもじもじとしている。

ここだけの話、私が零条士家に帰って来てから今日まで、鈴蘭とまともに会話をしていなかった。

「み、みんなとは会ったんだよねっ? その、昨日……」

どうやら生徒会のことを言っているみたい。

「鈴蘭を迎えに行ったときに会いました。それがどうかしましたか?」
「え!? えっと、大したことじゃないよっ? ただ……」
「なんですか」

私がこんなにも冷めた態度しか取らないから、鈴蘭も慌てるのだろうけど。
……これも私が作ったキャラなので仕方がない。

「どう、だった? みんなから、なにか言われたかなぁ?」
「なにか」

昨日の一連の出来事を思い出して、自分の顔が曇った気がした。

「特になにも。軽く挨拶だけして終わりましたよ。彼らと関わっているのは私ではなくあくまで鈴蘭ですし、楽しく会話する理由もありません」
「あっ、そうだね……」

鈴蘭は、ホッとしたような嬉しそうな顔をする。
いったいなんなんだろう?

まあ、生徒会の人たちは私を良くは思っていないようだけど。
……鈴蘭が辛い思いをしているって、どういう意味なんだろう。

鈴蘭の質問はそれだけで、それから学園に到着するまでは会話もなく窓の外を眺めて過ごした。

「到着しました。お二人とも、行ってらっしゃいませ」

車が停車し、鈴木さんがドアを開けてくれる。
降りた途端、登校中の生徒の視線が集中し、周囲が一気に賑やかになった。

「鈴蘭さんだわ! 朝からお目にかかれるなんて!」
「本当~! 今日も美しいわ〜」

鈴蘭は本当に人気者で、あっという間に人だかりを作っていた。
邪魔にならないように私はささっとその場を離れる。

「つぼみちゃんちょっと待っ……」
「鈴蘭、おはようございます」
「おはよう鈴蘭~、今日も変わらず可愛いね」
「あっ、皐月、昴もおはようっ」

呼び止められたと思い振り返れば、副会長二人組が鈴蘭と話していた。このままあの二人と校舎に向かうみたい。